幕内の取り組み前に土俵の周りを回る懸賞旗を見たことがある人は多いと思います。
何本懸賞がついたのか?いくら受け取ったんだろう?など、お金のことが気になってしまいがちです。
今回は、懸賞旗のことについていろいろと調べてみました。
このページに書かれていることは…
懸賞旗の基本
出典:http://mainichi.jp/
懸賞旗は誰が作るの?
懸賞旗は正式には懸賞幕といいますが、懸賞旗と呼ばれるほうが一般的です。
懸賞は政治的利用の禁止の立場から個人がかけることはできず、企業やスポンサーがかけることになります。
懸賞旗は懸賞をかける企業やスポンサーが自費で制作し、相撲協会に持っていきます。
場所が終わると返却されるそうです。
懸賞が懸かっている取組では、懸けた企業の名称や商品名が書かれた“懸賞旗”が土俵の周りを回ります。
同時に懸賞旗1枚につき、15文字以内の宣伝が場内アナウンスされます。
公共放送であるNHKでは、宣伝広告を流すことが禁止されているため、映像は引き画面になります。
さらに、アナウンス中は、過去の同じ取組の解説などを入れて場内音声を絞って放送しています。
テレビを見ているだけでは分かりませんが、会場では「味一筋、お茶漬け海苔の永谷園」「イエス、イエス、高須クリニック」などアナウンスされているわけです。
懸賞金1本の値段は?
懸賞金は1本62,000円(税込み)です。
申し込み条件として、1日1本以上で、1場所15本以上、金額にして93万円をかけることが相撲協会の規約で規定されています。
正式に明記されているわけではありませんが、現在1日5本以上であれば1日だけでも受付しているようです。
懸賞旗の制作費
では、制作費はどれくらいなのでしょうか?
懸賞旗を制作を請け負っているトマックさんでは制作費は1枚50,000円~55,000円(税別)ということです。
懸賞旗のサイズは相撲協会の規約により決められています。
縦70cm、幅120cm、生地はポリエステルで、棒は両端黒塗木製で径21mmX長さ84cm、左右、下辺には約2cmのモール、さらに金茶四段七宝フレンジをつけるとなっています。
旗のデザインは生地にプリントされているそうですが、永谷園だけはこだわりがあり、プリントではなく手染めしているとのことです。
懸賞旗のルール
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懸賞旗を出す条件
懸賞旗を出すには条件がいくつかあります。
相撲協会への届出内容に虚偽があった場合は懸賞旗を出すことはできません。
また、暴力団関係者の場合、刑事犯として検挙、逮捕、有罪判決が過去にある場合、さらに政治団体や宗教法人、消費者金融、性風俗関連などの広告としても懸賞旗を出すことはできないそうです。
懸賞旗のデザイン
土俵の上に揚げるため、デザインには一定の制限があり、個人名、個人の肖像を描いているものは使用できないそうです。
懸賞は個人ではかけることができないと書きましたが、懸賞旗にも個人名を入れることはできません。
昨年12月に自他共に認める相撲通のデーモン閣下が自身の最新アルバムの発売を記念して懸賞をかけたときのエピソードです。
デーモン閣下は所属プロダクション名で懸賞を出したそうですが、懸賞旗にはデーモン閣下の名前を入れることができませんでした。
また、個人の肖像が描いているのも使用不可のため、その代わりにデーモン閣下の目のメイク部分の模様だけを描くことにしたそうです。
しかし、相撲協会から「誰だか分かる顔は載せてはいけない」と物言いがついてしまいました。
そこで、デーモン閣下は「顔全部だったら肖像とはいうが、これはあくまでも目の周りの模様というかマークにすぎないので、肖像ではないって言い張った」そうです。
最後は相撲協会が折れた形になったそうですが、このエピソードからも分かるように神聖な土俵に揚げるものとしてルールは厳しくしているようです。
懸賞旗いろいろ
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イギリスの歌手・ポール・マッカートニーさんが新アルバムの告知のために急遽懸賞を出したり、池田理代子さん原作の少女漫画「ベルサイユのばら」の懸賞旗などが大きな話題となりました。
ここでは、そのほかに変わった懸賞旗がなかったか調べてみました。
日産「スカイライン」
2017年5月場所、日産自動車は「スカイライン」が4月24日に生誕60周年を迎えたことを記念して懸賞をかけました。
懸賞は主に、3月場所の劇的な逆転優勝を飾った横綱・稀勢の里や人気力士宇良関の取り組みにかけられたようです。
懸賞旗は「スカイライン歴代モデル」で全部で14枚、そのうち13枚に葛飾北斎の描いた「冨獄三十六景」を背景に歴代スカイラインが描かれています。
場所後には銀座の「NISSAN CROSSING」で展示されました(展示は終了)
長崎県・九十九島
2018年1月場所の結びの一番で、長崎県佐世保市が九十九島を全国的にPRしようと自治体が懸賞をかけました。
相撲協会によると、自治体が懸賞主となるのは、データがある2014年度以降全国で4例目とのことです。
懸賞旗には九十九島の島々の背景に「九十九島」の文字に読み仮名付きで描かれていました。
ちなみに場内アナウンスは「長崎佐世保市にある絶景 九十九島」だったそうです。
加賀野菜「五郎島金時」
石川県金沢市の五郎島農業生産組合が、1月場所で石川県伝統の加賀野菜のさつまいも「五郎島金時」を全国にPRするため、初日から石川県穴水町出身の遠藤関の取り組みに懸賞をかけました。
組合は広告宣伝費を国の補助金に頼らず、生産者から集めているとのこと。
今回の懸賞金についてもが生産者が2年をかけて調達したそうです。
懸賞旗は出荷箱と同じデザイン。赤色を基調にさつまいものイラストと「五郎島金時」のロゴが描かれています。
安美錦の応援に「ぷっぷる」の懸賞旗が登場
青森県出身の安美錦関を応援しようと、1月場所でヤマハ音楽教室が懸賞をかけました。
ヤマハ音楽教室が春からのレッスンスタートとなる生徒募集のためだったようですが、キャラクターの「ぷっぷる」がりんごをモチーフにしていることから安美錦の取り組みに懸賞をかけることになったようです。
懸賞旗は黄色を基調に赤い「ぷっぷる」が大きく描かれた可愛い懸賞旗、テレビ画面を通してもかなり目立っていました。
残念ながら安美錦がケガのため、6日目から休場してしまったため、懸賞は同じ伊勢ヶ濱部屋の宝富士関(青森県出身)の取り組みにかけられました。
情報番組「バイキング」の懸賞旗は?
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フジテレビのお昼の生放送情報番組「バイキング」が2017年に7月場所に懸賞金をかけたことが話題になりました。
バイキングはどんな番組?
31年続いたフジテレビのお昼のバラエティ番組「笑っていいとも」の後継番組として2014年4月にスタート。
当初は生活情報バラエティ番組として、半径500mの日常をエンターテインメントにする、タメになって面白いことを発信するという主旨で始まりました。
MCが日替わりで務めていましたが、2016年からは金曜日のレギュラーだった坂上忍さんがMCの「生ホンネトークバラエティ」として番組内容も一新。
社会的な要素を中心に取り扱い、雛壇のタレントたちが世間で騒がれている話題に対し、好き放題に討論しあう番組に変わりました。
番組で懸賞をかける
2017年の1月場所で大関だった稀勢の里が優勝し横綱へ昇進すると、番組内で相撲の話題を取り上げることが多くなりました。
番組内で懸賞金を最初に話題にしたのは5月16日の放送です。
稀勢の里の人気により、大相撲では懸賞の数が急増していることが話題になり、MCの坂上忍さんが興味を示します。
坂上さんから「『バイキング』で出せないの?」と質問されたキンボシの西田淳裕さんが「出せますよ」と回答すると、「じゃあバイキングで懸賞を出そう」ということになったのです。
7月4日の放送でお披露目された懸賞旗には、鮮やかな青地に赤い文字で「お昼はやっぱりバイキング」、フジテレビのロゴがデザインされていました。
7月9日の初日、稀勢の里X御嶽海の取り組みでバイキングの懸賞旗が土俵の周りを回り、ネットでも話題になりました。
ちなみに、2日目が高安、3日目は宇良の取り組みに懸賞をかけたそうです。
相撲に対するバイキングの現在の扱い
情報番組は世間で話題になっていることを扱うわけですが、バイキングでももちろん、元横綱の日馬富士による暴力事件は毎日のように話題にして討論されました。
バイキングでは、貴乃花親方の母で、今は絶縁状態である藤田紀子さんがゲストとして出演しており、貴乃花親方が正義、相撲協会が悪という報道をしていました。
2017年の7月場所以来、バイキングは懸賞をかけていませんが、今後、また懸賞をかけることがあるのか注目していきたいですね。
懸賞旗を持つ人は誰?
出典:https://www.asahi.com/
テレビ中継を見ていて、懸賞旗を持って土俵を回っている人は誰?と思う人は多いのではないでしょうか。
実は、懸賞旗を持って土俵を回っているのは呼び出しです。
呼び出しの仕事は多岐に渡り、大相撲の本場所の開催を裏方として支えています。
呼び出しとは?
鎌倉時代から戦国時代にかけた武士の時代、将軍の前で相撲が披露されていました。
それを上覧相撲と言い、土俵に上がる力士の出身地や四股名を披露する人は「前行司」と呼ばれ、行司の役割に含まれた職種でした。
江戸時代以後、勧進相撲となって組織的な制度ができると前行司は独立した職種となり、「触れ」とか「名乗り上げ」と呼ばれ、その後、「呼び出し」といわれるようになったのです。
現在の呼び出しの定員は45人、採用資格は義務教育を修了した満19歳までの男子となっています。
中学を卒業して、すぐにこの世界に入る人もおり、その点は力士と同じですね。
定年は65歳、力士と同様に呼び出しのほか、行司、床山も各相撲部屋に所属しています。
呼び出しの番付制が導入されたのは平成6年7月場所から、現在9階級になっています(以前は5階級)。
行司が木村○○、式守○○と受け継がれる名跡があるのに対し、呼び出しは下の名前しかないのが特徴です。
現在、呼び出しのトップは立呼び出しの拓郎、副立呼び出しは不在です。
以下、三役呼び出し、幕内呼び出し、十両呼び出し、幕下呼び出し、三段目呼び出し、序二段呼び出し、序ノ口呼び出しとなります。
呼び出しの仕事
呼び出しの3大仕事は呼び出し、土俵作り、太鼓叩きですが、そのほかにも大相撲の開催のため様々な仕事をしています。
●呼び出し
土俵上で扇子を開き、次の取り組みの力士の四股名を呼び上げます。
独特の節回しで呼び上げ、「ひ~が~し~、き~せ~の~さ~と~、き~せ~の~さ~と~、に~し~、とち~の~し~ん~、とち~の~し~ん~」という感じです。
呼び上げる順番は決まっており、初日から数えて奇数日は東方から、偶数日は西方より呼び上げます。
●太鼓叩き
相撲には太鼓の音がつきものです。
太鼓には「触れ太鼓」「櫓太鼓」「寄せ太鼓」「はね太鼓」など、いくつか種類があり、すべて呼び出しが叩いています。
また、土俵入り、横綱土俵入り、土俵の進行などの合図になる拍子柝打ちも呼び出しの仕事です。
●土俵作り、手入れ
土俵は本場所、巡業の前にその都度、新しく作っています。
それを作っているのは呼び出したちです。
また、土俵の手入れも呼び出しの仕事、取り組み後に土俵をほうきで掃き清めたり、蛇の目(俵の外側)の砂もならします。
土俵際の微妙な判定の場合、蛇の目の砂を確認することがあるからです。
●カ水,力紙,塩などの管理
呼び出しは、力士が仕切りの際に使う、力水、力紙、塩、タオルなどを管理しています。
どれくらい残っているのかを常に気を配って、少なくなったら補充しています。
また、取り組みで力士が土俵から落ちてきた時には、水桶や塩入れを持って逃げることもあります。
●懸賞旗を持って土俵を一周
取り組みに懸賞をかけた企業やスポンサーの懸賞旗を持って土俵を一周します。
注目の取り組みにはたくさん懸賞がかけられるため、二度、三度と土俵を一周することもあります。
勝負が決まると素早く懸賞金を行司に渡すもの呼び出しの仕事です。
また、勝ち残って次の力士に力水をつけている間、勝った力士から懸賞金と下がりを受け取り、懸賞金の水引の間に下がりを挟んで一つにまとめて力士に渡します。
●そのほかの仕事
そのほかに場所中は会場で、力士の世話、審判委員や行司の世話を担当、所属する相撲部屋でも雑務をこなしています。
まとめ
いろいろあっても、相撲を応援しようという企業は懸賞金をかけ続けています。
相撲そのものを応援する企業、力士を応援する企業など様々、相撲人気の相乗効果を期待して懸賞をかける企業も多いようです。
最近では、観客やテレビを見ている視聴者の目に留まるような個性的な懸賞旗も多くなっており見ているだけでも楽しませてくれます。
また、懸賞旗が土俵を回る風景は、その取り組みがどんなに注目されているのかを感じるバロメーターになっています。
逆にこれだけ応援してくれる人、企業がいるから相撲という興行が成り立っていることを考えて、相撲協会も様々な面で改革し、純粋に相撲を応援できるようにしてほしいと心から願っています。
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